道産材を使うこと。~北海道の木材自給率~

2021-08-02

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道産材を使う

奥の白い丸太が道産トドマツ、手前が道産カラマツ。 当麻町にて。

 北海道の森林事情は1950年頃までは非常にバランスがとれており、道内の木材自給率は90%を超え、広葉樹と針葉樹が程よく混ざった状態でした。1960年から1970年代は200年以上の樹齢の広葉樹の伐採が進むと同時に、針葉樹の植林が進みます。その時期に植林されたカラマツやトドマツが伐採期を迎えているのですが、現在は安価な外国産材への依存度が高く、道産カラマツやトドマツの利用は進んでいないのが現状です。

 

北海道での建材の木材自給率

北海道の木材自給率の参考資料

 

 上記のグラフは一つの例ですが、H27年度の地域型住宅グリーン化事業における道産材の自給率のグラフです。「森林資源が豊富」と言われている北海道ですが、製材や集成材は自給率が非常に低く、資源の有効利用の余地があることがわかります。 植林された「カラマツ材」はフォークリフトのパレットなどに主に利用されているのが実情です。

 

道産カラマツ

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道産カラマツ(左)と外国産集成材ホワイトウッド(右)

 

 トピカの建築では道産カラマツを構造材として積極利用し、地産地消の循環型の地域社会の形成に寄与できないか、生産者の方々や製材会社の方、そして行政とも情報交換をしながら模索を続けています。写真の角材は左が道産カラマツ材で右が外国産の集成材になります。 北海道の建築の木材は半数以上が右の外国産の構造材が使用されておりますが、近年、林産試験場が開発したコアドライという特殊乾燥技術を利用したカラマツ構造材の技術が確立し、少しずつですが道産カラマツの利用も進んでいます。

 

コアドライを利用した空間。独特の赤身と木目が特徴。 カラマツの架構を美しく見せるために、天井面に照明器具を設けずに、合わせ梁の隙間にアッパーライトを設置している。壁はホタテの貝殻を再利用したホタテ漆喰(設計:トピカ)

 

 トピカではカラマツに限らず、ホタテ漆喰や札幌軟石、江別煉瓦、鉄平石、旭川の木工家具や建具など、地域の材料や技術を統合することで生まれる空気感や新しいデザインをいつも模索しています。また、それらの地域の魅力が寒冷地の厳しい自然環境のなかで、いかに「人間らしさ」を獲得できるのか。 日々の仕事の中で問い直していきたいと考えています。