間接照明のこと

間接照明は気づかれないように

北海道は冬が長く、家のなかで過ごす時間がとても長い。家での滞在時間が長いので、生活を灯す照明をどのように考えるか。とても重要なことなので、いつも考え直して設計をしています。昨今ではコロナ禍のこともあり、さらに自宅にいる時間が長くなる傾向にあります。そうした時間を少しでも豊かに、人間的につくろうとするとき、照明が果たすべき役割はとても大きい。

照明には大きく分けて、光源が見える直接照明と光源を隠す間接照明がありますが、私たちが設計するときには基本的に、直接照明と間接照明を併用して計画しています。そうすることで、各照明の役割を明確にできますし、雰囲気やデザインを考えやすくなります。

こちらの写真はトピカで設計した住宅ですが、天井面に照明器具をつけなくて済むように、カラマツの合わせ梁の間に照明器具を設置して柔らかく天井面を照らしています。初めてこの場に入った人は「間接照明が入っているんですよ」と言われなければほとんど気づかない。そんな照明計画を目指したデザインです。この天井からの反射光のみで地灯りをとり、柔らかくほのかにその場を包む。演出的にならずに自然に。そんな役割をこの間接照明に求めています。

こちらも同じ建物の別室ですが、地灯りは上部をほのかに照らす間接照明。言われなければ気づかない、脇役としての間接照明です。現に内覧会にお越しになられた方々の殆どは照明を消したときに初めて間接照明によって照らされていたことに気づいていたほどです。手前のスポットライトはタスクライトとして必要な時に使用し、地灯りは間接照明でとる。

照明計画を行うときは、このようにそれぞれの器具の役割を明確にして、過不足ないように設計することが望ましいと考えています。

トピカは設計事務所ですので、照明計画はライティングデザイナーの方のアドバイスを頂くこともあるのですが、どんな光がいいか、どんな空間にしたいか。方向性を決めるのは建築家の役割です。演出的にならずに自然に。これからも柔らかい灯りをテーマに問い直していきたいと思います。